イギリス・ロンドン出身で、インド人の祖母を持つエレクトロ・ミュージシャンのGold Panda。『Lucky Shiner』『Companion』と、“ベッドルーム”から独特なオリエンタルな香りが立ち込めるサウンドを展開し、ここ日本でも話題をさらいました。そして、6/5に約3年ぶりとなる待望の新作『Half Of Where You Live』(フル・アルバム)をリリース! 「Brazil」「Enoshima」などの地名を冠した楽曲をはじめ、“旅”“都市”とリンクした作品になっていることがうかがえます。長期間にわたるツアーや新天地ドイツ・ベルリンでの新生活。さまざまな環境変化を経て、どのように本作は生み出されたのでしょうか。新譜リリースに先駆け、4/16に来日公演を行ったGold Pandaを直撃しました!

Artist:Gold Panda
Interviewer:青山晃大

――『Half Of Where You Live』は、デビュー・アルバム『Lucky Shiner』から約2年半ぶりのアルバムになります。この間に生活も大きく変わったと思いますが、何が1番変わりましたか?

Gold Panda:本当に自分の人生はまったく別のものに変わったよ。家賃もちゃんと払えるようになったしね(笑)。彼女もできたし、前のアルバムをつくる前よりも幸せを感じている。以前は、これから人生をどうしていこうか悩むこともあったけれど、ファースト・アルバムを出して、“僕がやるべきこと・できること”っていうのが明確になったと思う。自分でも達成できることがあるっていう自信がついたんだね。

――今はベルリンに住んでいるということですが、移住した経緯を教えてください。

Gold Panda:ベルリンには2年前くらいに引っ越したんだ。その前にハンブルグにも住んでいたから、ドイツに移住したのはもう少し前だね。すごく良いところだよ、クソ寒いけどね!(笑)彼女とドイツで出会ったことがきっかけで、一緒に住み始めた。彼女はプロモーターをやっていて、Caribouをドイツのショーに呼んだ時に、僕がCaribouのツアー・サポートを務めていたから一緒についていったんだ。その時、彼女はGold Pandaはいらないと思ってたらしいんだけど(笑)。

――そういった環境の変化は、どのように新作に反映されていますか?

Gold Panda:そうだね。ファースト・アルバムを出してから、ずっとツアーを回っていたことも大きく影響を与えていると思う。前のアルバムはすごくパーソナルな作品だった。今回のアルバムもパーソナルな部分はあるけれど、それよりも色んな場所を回った経験の方が強く反映されている。それと、サウンドもストレートでシンプルにしたかったんだ。ベルリンで多くのハウスやテクノを体験したことも影響のひとつだね。ハウスやテクノをそのままつくるって意味ではなく。

――確かにベルリンはテクノやハウスなどダンス・ミュージックのイメージが強いですね。

Gold Panda:地元の人は否定したがるけど、実際そうだよ。クラブも古くて大きなビルがたくさんあって、自由で良い雰囲気なんだ。毎日毎晩クラブ・イベントが開催されていて、中にはヘッドライナーが朝の8時からプレイするパーティーもあるんだよ。

――以前はクラブ・カルチャーと自分との関連性は、あまりないと話していました。それもベルリンに移住して変わりましたか?

Gold Panda:いや、今でもクラブ・カルチャーと自分の音楽はあまり関係ないと思っているよ。そこまで頻繁にクラビングするわけではないし。ただ、自分がクラブでプレイする仕事をしてきて、人がダンスをしている空気感とか経験したことが反映された部分はあると思う。新作はダンス・アルバムとまではいかないけれど、以前よりもストレートで、ビートが中心になっているから、クラブ・シーンでも好かれる音になったんじゃないかな。

――以前に比べると、全体にすごくシンプルでフォーカスのとれた印象を受けました。

Gold Panda:前よりも忙しくない音をつくりたかったんだ。以前は自分の音楽の質感に自信が持てていなかったのもあって、レイヤーを重ねることで厚みを出していた。今回はそれを止めて、レイヤーを削ぎ落としていくようにつくっていった。それに、『Lucky Shiner part.2』みたいなのもつくりたくなかったから、それは意識したね。そういったことに早く気づいていたら、もっと早く完成していたと思うんだけど、最初は前作のファンをキープしたり、がっかりさせないためには同じような作品をつくった方がいいのかなって迷っていた時期があったから、少し時間がかかってしまったんだ。それを乗り越えたらすんなりとつくれたんだけどね。

――新作の制作に取りかかったのはいつ頃から?

Gold Panda:だいたい1年前くらいだね。6曲目の「S950」は「Lucky Shiner」よりも前に出来ていた曲なんだけど、そのほかは全部新しい曲。「S950」はいつかフィットする作品が出来るんじゃないかと思って昔からキープしていた曲で、今回のほかの曲と似たようなつくり方でレコーディングしたんだ。ほとんどラップトップを使わずに、昔のやり方に原点回帰するような方法で、サンプラーのMPC2000やドラム・マシーンの808を主に使って、つくっていったんだよ。MPCや808は、昔から使っていてもまったく飽きることがない1番のお気に入りで、ライヴでもプレイしやすいんだよ。

――今回のアルバムが完成した時はどんな気持ちでしたか?

Gold Panda:アルバム全体としては、今回の方が良い仕上がりになっていると思う。2枚目のアルバムができて、初めて開放感や自由を感じられたんだ。次の作品は、もっと新しいGold Pandaを見せられるんじゃないかって。

――前作はノスタルジックなイメージがありましたが、今作ではそのイメージにも変化があります。

Gold Panda:このアルバムは、もしかしたら少しダークな部分があるのかもしれない。気が沈むようなダークさではないんだけど、今回はドリーミーな部分をなるべく排除しようとしたんだ。特にアメリカに行くと、よく「あなたの音楽は“Chill”だね」って言われるんだけど、それに嫌気がさしていて。その言い方がすごく嫌なんだ。だって、形容詞だったら“Chill”じゃなくて“Chilled”が正しいはずなのに! 僕はイギリス人だから、そういう細かい部分が気になってしまうんだよ。もちろんアンビエント・ミュージックは好きだけど、そういうカテゴリーに入れられるのがイヤだったから、少し変えようとしたんだ。

――今作には地名のついた曲が多く収録されています。ツアーで廻る土地のカルチャーの違いなどにインスパイアされることは多いですか?

Gold Panda:ツアーで外国に行くと、送り迎えがあって、ホテル、レストラン、クラブ……って連れていってもらって、良い待遇をされることの方が多いから、それでカルチャーを体感できているのかどうかは分からないけれど、ほかの国でインスピレーションを受けることは多いね。

――例えば「Brazil」という曲がありますが、これはどんな風に出来たんですか?

Gold Panda:サンパウロに行ったんだけど、すごく活気があってクレイジーな街だったんだ。それで、家に帰った時に偶然ブラジルについて歌っているレコードを見つけて、それで空港から街に向かう途中の興奮をチャント(詠唱)の形で表現してみた。そういう都市についてのアルバムになってるんだよ。多くの曲は、ツアーから帰ってきてレコードを聴いていたりする時に、旅先のイメージを喚起する断片が見つかって、そこから発展させていったんだ。

――旅についての曲が多い中で、どこかホームを恋しく思うような曲も収録されていますね。

Gold Panda:「English House」という曲は、自分がどこの国に住んでいても部屋をイギリスっぽいモノで埋め尽くして生活してしまうことがテーマなんだ。今はベルリンで生活しているけど、内心はイギリスをすごく恋しく思っていて、今でもイギリスに戻りたいと思う時があるよ。

――「Flington」というタイトルは、ヨークシャー州にある村の名前のようですが。

Gold Panda:“Flington”というのは、実は僕のツアー・マネージャーの名前のことなんだ。地名になっているのは偶然なんだけど、調べてみたらそういう名前の村があるって知って、面白い偶然だなって感じたよ。彼とは本当に長年の友人で、一緒にツアーで世界各地を旅してきた人なんだ。

――最後の「Most Liveable City」は、アルバムのテーマを象徴してるようにも思いました。

Gold Panda:「Most Liveable City」というのは、Monocleという雑誌が毎年発表している“世界の最も住みやすい街”というランキングからとったんだ。自分にとって住みやすい街はどんなのだろうって想像して、クリーンで安全で、でもニューヨークやロンドンと同じくらい刺激があって……っていう。そんな街は実際には存在しないんだろうけどね(笑)。さらに、聴き取るのは難しいかもしれないんだけど、実はこの曲には「Junk City 2」と同じ音のピースを使ってて、「Junk City 2」がディストピアのような街並みを想像してつくったのと対比させているんだよ。「Most Liveable City」の最初に出てくる鳥の鳴き声は、アマゾンを特集したテレビ・ドキュメンタリーを録音したもので、その後の女の人の声は僕の彼女がスカイプで連絡してきた声を使ったんだ。

――今作も“都市”がひとつのテーマとなったアルバムになっていると思うのですが、あなたが“都市”に惹かれるのはなぜ?

Gold Panda:ベルリンはまた雰囲気が少し違うけれど、特にニューヨークとかロンドンは、すべてのものが忙しくて、その中で暮らしていると何もしないでいることが難しい。何かに急かされているような感覚になるんだ。僕は何もすることがなくて途方にくれるより、そっちの感覚の方に惹かれるんだよ。“都市の孤独”みたいなものを以前から表現してきたんだけど、自分にとっては外国であるベルリンに移住してその感覚がさらに強まったようにも思う。そういう部分が新作にも反映されていると言えるかもしれない。


Gold Panda オフィシャル・サイト
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