アメリカはニューヨーク・ブルックリンの5人組バンド、My Best Fiendはなんとも不思議なバンドだ。MGMT、MOGWAIと並べられることが多いが、それ以上に繊細でいてどっしりとしたオーラを放っている。フォーク、ゴスペル、ロックなどを組み合わせたサウンドに、Frederick Coldwellの信仰や宗教観が色濃く反映された歌詞が響き、空気に溶けるような浮遊感あるヴォーカルは、不安と高揚感の狭間を漂う。3/10にデビュー・アルバム『In Ghostlike Fading』をリリースし、それからわずか4カ月あまりでFUJI ROCK FESTIVAL’12の大舞台に立った。初来日にして、RED MARQUEEを甘美で危うげな空気で満たし、英名門レーベルWarp Recordsを魅了した才能を見せ付けた5人。WITCは、バンドからFrederick とPaul Jenkinsにインタビューを敢行! 音づくりへの思い、バンドへの姿勢を聞きました。

Artist:Frederick Coldwell(Vo&Gt)、Paul Jenkins(Key)/My Best Fiend
Interview & Text:Mio Yamada

――(FUJI ROCK FESTIVAL’12でのステージを終え)お疲れさまでした。日本の大型フェスはいかがでしたか?

Frederick Coldwell:FUJI ROCKに呼んでもらえて光栄だよ。好きなバンドや伝説的バンドが出演している舞台に一緒に出ることができてうれしかったね。なにより、オーディエンスのリアクションが本当に素晴らしくて! こういうことって、ニューヨークにいるとまったく想像できないから、日本に来て実際に目にすることができて本当にうれしいよ。

――私たちもステージを見ることができてうれしいです。普段と違った環境での演奏は、音づくりに影響しましたか?

Frederick Coldwell:こうやって日本でパフォーマンスをすることもそうだし、僕たちは出会った人やものすべてから影響を受けていて、それを音に反映させたいと思っているんだ。「これは影響を受けないようにしよう」とか否定するようなことは考えていないし、僕たちは周りのものに対してオープンでいたいんだよね。FUJI ROCKは今までで1番大きなショウのひとつだから、気付かされることも多かった。会場の後ろの方にいる人も、歌詞の意味が分からなくても一緒になって歌ってくれた。今でもはっきり思い出せるよ。あれだけ多くの人がいても、一対一の関係性が大切だということに気付かされたし、これはきっと次回作にも活かされていくんだろうね。

Paul Jenkins:ニューヨークから遠く離れた場所に行くだけでも、自分にとっては刺激的なことなんだ。音楽面もそうだし、もっと可能性が広がるような気持ちになれたよ。

――なるほど。My Best Fiendはデュオという形でスタートし、パンクやハードコアなどさまざまな音楽性のメンバーが集まって今の形となっていますが、当初から5人が目指していた音楽性は一致していたのでしょうか?

Frederick:正直、特定の方向性やビジョン、目指すものがあったわけではないんだ。ただ、違うロック・バンドから集まったメンバーが音に対して純粋で真摯な姿勢で向き合ったとき、どういう作品、ステージでのパフォーマンスが生まれてくるのか興味があった。だから、次の作品がどうなるか自分たちでも分からないけれど、それぞれがベストを尽くしたときにどういうものが生まれてくるのか、僕たち自身も知りたくてたまらないっていう感じなんだよ。

――FrederickとChrisで、生楽器とエレクトロの違いについて議論をしたことがあるそうですが、バンドを経験した今思う、それぞれの可能性とは?

Frederick:エレクトロ・ミュージックは大好きだし、素晴らしい音楽が生まれていることは間違いないと思うよ。でも、極限まで究めればライヴっぽい音を出せると思うんだけど、電気機材にはパフォーマンスの制限があるし、僕自身は生の楽器を演奏することで産み出すものにこだわっていきたいから、生楽器の方が魅力を感じるね。

――今おっしゃっていた「パフォーマンスから生まれたものを大切にしたい」という思いから、新作はライヴ・レコーディングから形になったのでしょうか?

Frederick:まさにその通りだね! ライヴ・レコーディングは、その瞬間を切り取ったものっていうイメージになるんだ。例えば、今日レコーディングしたものとまったく同じものをつくろうと思っても、できるものは別の作品なんだよね。そこが魅力なんだ。“あの時”“あのレコーディング”から生まれたものがこの作品であって、二度と同じものはできない。僕たちにとっては、その時の瞬間を切り取っているものがアルバムなんだ。

――では、バンドにとってのアルバムづくりは、「こういう作品をつくりたい」という思いからスタートするよりも、今の姿を切り取りたいという思いの方が強い?

Frederick:アーティストとして、ある程度はつくりたいという衝動に基づいていることは間違いないけれど、今回の作品では僕たちのそういった思い以外にも、Warp Recordsと契約できたことによって与えられたスタジオの環境や潤沢な時間という状況が反映されているね。ドキュメンテーションというか、今の記録になっている部分はあると思う。詩人や画家と同じで、つくりたいという思いがあるから僕たちはアーティストであるけれど、それと同時にひとつの作品として考えてみると、「その瞬間を切り取りたい」という意識はあったよ。

――この作品が生まれたきっかけのひとつでもあるWarp Recordsとの契約は、共同で作品づくりを行ったMatt Boynton氏がデモ・テープを送るなど橋渡しをしてくれたんですよね。Matt氏との仕事の魅力はどんなところにあるのでしょうか?

Frederick:まず、Mattと友人であるということがすごく大きいね。彼とは、本当に親友と言えるほどの関係だから、殴り合わなくてもケンカできるんだよ(笑)。暴力にならずに物事を言い合うことで、余計な部分をそぎ落として核心が見えてくる。自分がやりたいことは何だろう、彼が言いたいことは何だろうということが見えてきて、いい仕事ができるんだ。それが大事だと思うんだよね。もちろん、レコーディングの現場でも、友人だからこその楽しさもあるよ!

――今回の作品は非常にパーソナルな内容を歌っていますが、今の感情ではなく、価値観など自分の根底にあるものを曲にすることは抵抗なかったのでしょうか?

Frederick:その通りで、実際すごく怖かったよ。でも、世界に向けて自分のすべてをさらけ出すっていうことは、すごく恥ずかしくもある一方で、成し遂げることができる強さを身につけたことを誇れる気持ちもあったんだ。このふたつが入り混じった感情のなかで、作品を生み出していったんだよ。そのときの考えを曲にしたものに価値がないと言っているわけではないけど、僕らはパーソナルな内面をさらけ出すようなやり方で曲づくりをしているんだ。

――自分の内面をさらけ出すことへの恐怖と誇りのせめぎ合いのなか曲づくりを行うことで、自分と向き合っている印象を受けたのですが、パーソナルな部分を曲にすることの意味は?

Frederick:答えになっているか分からないけれど、テーマに沿って曲を書くことって、ある意味でフィクションだと思うんだよね。決まったゴールに対するプロセスを切り取ったものだって感じちゃうんだ。僕は誰かに聴かせるために曲を書いているというよりも、自分のために曲を書くという意識からスタートしているところがあるんだ。例えば次の作品をつくるときって、前作に対する感情も新たに生まれてくるじゃない? そのとき、自分が自分自身に対して正直であるというか、他の誰でもなく自分のために曲を書くという意識がないと、生まれてこないんだよね。前作よりも多くの人に聴いてもらいたいという感情もあるわけだから、自分の内面について書いているという意識がないと、曲がグラついてしまうんだ。

――My Best Fiendは、作品づくりの上で「今のバンドの姿」を刻むということを重視していますが、バンド名にWerner Herzog監督のドキュメンタリー作品「My Best Fiend(邦題:キンスキー、我が最愛の敵)」を引用したことと関係あるのでしょうか?

Frederick:難しい質問だね(笑)。ドキュメンテーション的にアルバムをつくっているし、バンドの名前がドキュメンタリー作品から来ているという点でつながりがあるかもしれないけれど、そこまで追求して考えたくはないかな。単純にHerzog監督の「My Best Fiend」が好きなんだ。こういうアプローチをしているけれど、そこまでの意識はないんだよ。僕はもともと両面性のあるものが好きだし、そういう考え方を持っているから、ピッタリの名前だと思ったんだよね。「最愛の敵」っていう響きがすごく好きなんだけど、僕のなかでのニュアンスで言ったら「My Dear Best Friend」なんだよ。


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