4月5日に東京・SHIBUYA-AXで行われたNothing’s Carved In Stoneとのツーマン企画“Hand In Hand & KYO-MEIライブ~シリウス~”で、9thアルバム『リヴスコール』のリリースを発表したTHE BACK HORN。さまざまな角度から“THE BACK HORN”という自分自身を見つめてきた4人は、今作では各々が東日本大震災とその先にある命に向き合い、“生命の賛歌”という新たなステップへと到達した。今、彼らは何を感じ、何を叫ぶのだろうか。

Artist:山田将司(Vo)、菅波栄純(Gt)、岡峰光舟(Ba)、松田晋二(Dr)/THE BACK HORN
Interview & Text:Mio Yamada

――前作『アサイラム』とはまた違い、今回もいい意味で裏切られました。『アサイラム』は「形を限定せずに曲をつくっていった」というお話でしたが、今回はどのように曲づくりを進めていったのでしょうか?

山田将司:今回は(東日本大)震災が起きる直前くらいから、みんなでネタを持ち寄って曲をつくっていました。当然、震災が起きてからが一番でかくて、「世界中に花束を」ができて。それからも歌詞だけ、ワンフレーズだけ、まるまるつくって持ってくるという感じでそれぞれがきっかけを持ってきて、それをもとにセッションして、その日のスタジオで構築していくやり方ですね。

――アルバムをつくろうという動きは、震災前からあったのですか?

岡峰光舟:どこかのタイミングでアルバムを、とは思っていましたが、そのときは具体的な目標はなく、とにかく曲をつくっていこうという感じですね。だからテーマはなくて、「曲をどんどんつくっていこう」「自分たちの聴きたい音楽、やりたい音楽をとにかく持ち寄ってみよう」というスタートでした。

――もともとそうやって持ち寄ったものが、震災の影響を受け大きく変化したものはありました?

菅波栄純:今回のアルバムに入っている曲で、震災の時期をまたいでつくった曲って「世界中に花束を」なんですよね。震災前に原型があって、震災を受けて形になった。震災の後、自分たちに何ができるだろうって考えた結果、やっぱり曲をつくろうってなったときにひとつになった。この前、光舟が「曲って生ものだからできなかったらできない」って言っていたんですけど、「世界中に花束を」は震災を受けて自分たちの心の動きがあったから、形になったんだと思います。他の曲は、震災以降にきっかけができた曲が多いかな。

――「世界中に花束を」は震災をまたいでできた曲だということですが、もともとの形と完成形の最も大きな違いは?

岡峰:山田が曲のメロディだったり、展開をつくってたんです。「世界中に花束を」のためではないけどマツ(松田晋二)が書いていた歌詞があって、別々だったふたつのものがひとつになった。震災っていうタイミングじゃなかったら、ほかの曲として生きていたかもしれない。この曲としてはまとまらなかっただろうなって思います。

――今完成している曲の形は、出発点からは予想外だったんですね。

菅波:そう、予想外。ベストを尽くそうと思ったときに、そのふたつの要素があったってこと。あと「世界中に花束を」は震災前からあった歌詞なんだけど、自分たちのなかで聴こえ方が変わったんです。もともとマツが個人的な思いを書いた曲で、すごく個人的で主観的だったんですよね。でも震災後に歌詞を見返して、個人的なことというよりは「世界中の悲しみに向けて」とか「誰か遠くで泣いている人のため」に書かれた歌詞のように聴こえてきて。新しい歌詞を書くなり、曲を書くなりっていう選択肢もあったのかもしれないけど、この歌詞とこの曲以上のものは今の段階では出せないだろうって自分たちで思えるくらい大きなものに変化したんです。

松田晋二:震災前に、自分の空しさや近づいているようだけど遠ざかっているような実体のないなんとも言えない感情に、1回1回区切りをつけていかないと、ものすごく渦巻くものになってしまうんじゃないかっていうことを感じていて。本当は誰もが「幸せになりたい」「争いごとをしたくて争いをしてるわけじゃない」って思っているけれど、その思いと現実の距離感を感じていたんです。1回1回そういうものにさよならをつけられる強さを持ちたいと思いながらこの歌詞を書いてたんですけど、歌詞を書いたあとに震災が起きて、願ってていることと現実が違うなって感じていたことが震災という形で起こってしまったんです。

――なるほど。「世界中に花束を」は震災を受けて変化し、ほかの曲も震災後に動き出したということですが、震災を受けて歌いたい、曲として伝えたいというテーマはあったのでしょうか?

菅波:具体的なテーマはなかったですね。震災があって感じたことは、各々違うと思う。曲づくりは、同じバンドとして無我夢中でつくった「世界中に花束を」をライヴでやりながらの日々だったんです。そうやって震災後の世界を一緒に生きている4人が、全然違う方向を向くことってねえんだろうなって信じられたところがあって。今回、本当につくりたいものは4人一緒で、音楽やアルバムに込めてきたことの繰り返しでもあるけど、「音楽でどれだけ人の力になれるっていうか」「正直な形で人の力になれる音楽をつくれるか」っていうことがやりたくて。それを信じることができたからテーマはいいやと。今回は「THE BACK HORNらしい曲を持ってこよう」とかそういう縛りもなしで、個人個人が本気で伝えたい言葉と鳴らしたいメロディとを書いてこようって話しました。

松田:今回はTHE BACK HORNを見つめる作業じゃなかった気がします。外に視点が向いていたのかもしれないし、ひとりひとりの心に向かっていったのかもしれない。

――確かに『リヴスコール』は、聴いていて4人個人個人が震災と向き合ったんだろうなと感じました。歌詞を見ても向き合い方が違っていて。曲として完成させるにあたり、それぞれの出発点となったメンバーの考え方を軸に置きながら進めていったんですか?

菅波:考え方や生き方の違いはあるけど、込められた強い気持ちっていうのは音に力として出てるもんで、そういうものを聴いちゃうと「考え方や価値観が違う」っていう言葉より、「すげえジンときた」っていう言葉が先に出てくるんです。オレらって結構お互いの歌詞に意見を言うんですよ。いつもは「オレちょっとここ共感できねえ」とか「全然わかんねえ」とか言い合うんですけど、今回はほかのメンバーから出てきた歌詞にわかんねえと思ったところがひとつもなかったもんなあ。どの曲からもすごく強い気持ちが伝わってきて、ジンときたっていうか。

――それぞれの曲で描かれている4人が辿りついた結論や思いは一緒だった?

菅波:それはまだわからないですね。結論は出してねえような気がするし、出したいのかどうかもよく分かんねえっていうか。

山田:結論は1個出せるものじゃない。でも熱量はみんな同じくらい高まっているから、各々できることは違うし無理にまとめなかったんです。お互いに「大丈夫だよな、信じてるぞ」っていう気持ちで迎えたアルバムづくりではありましたね。このアルバムが、これだけのバリエーションがあって歌詞もバラバラなのに1本筋が通っているのは、そういうところからきているんです。

――前作『アサイラム』は、「聴いてくれる人の避難場所に」という思いが込められていました。今回の『リヴスコール』というタイトルには、どのような思いが込められているのでしょうか?

松田:「生命の叫び」「生命の賛歌、力強さ」というものを、自分たちのなかで持っている真っ直ぐな言葉としてタイトルに出したかったんです。「リヴスコール」は「リヴ」と「スコール」を合体させた造語なんですけれど、いろんな捉え方ができると思っていて。“生きる”と「リヴ」と“叫ぶ”という意味を持つ「スコール」が合体して“生命の嵐”みたいなことを伝えられるし、生命の複数形の「リブス」と「コール」で区切ると、この13曲でみんなに呼び掛けるっていう意味にもなる。自分たちのなかでは、真っ直ぐな思いを自由な捉え方ができる名前と呼ぶにふさわしいものになったと思っています。自分たちでこれだけつくったアルバムを「これです」って限定できないじゃないですか。でも、「こういうのが入っているよ」っていうことや、「こういう気持ちでつくったんだ」っていうことは届けたい。今回もいろんな出発点からいろんなタイトルがでてきたんですが、この「リヴスコール」に集約されましたね。思いは曲に込めていますが、それを名付けたものが「リヴスコール」なんです。

――この言葉が出てくるまで大変でしたか?

菅波:かなりありましたね。アルバムのタイトル決めは、自分らがそのアルバムをもう一回つかみ直す時間でもあって。アルバムを短い言葉に凝縮しなきゃいけないじゃないですか。THE BACK HORNは打ち合わせが長いって言われるんですけど、その時間はやっぱり充実してますよね。

松田:やっぱり、名付け方のセンスがそれぞれ違うから、THE BACK HORNやこのアルバムとして一致させる作業は毎回あるよね。今回は「生命の叫び」とか「賛歌」みたいタイトルがいいってみんな感じていたところではあるけれど、それをどんなネーミングにしたいかっていうのはそれぞれあったし。

――『リヴスコール』は、「シリウス」のインタビューで話を聞いたときにも感じた“バンドとしての進化”があると同時に、すごく自然なバンドの今の姿が感じられました。アルバム全体として、これらも伝えたいということは意識したのでしょうか?

岡峰:アルバムごとの進化もあるけど、バンドとしての区切りというか、オレらなりの音楽で2011年という時間を刻んだ感覚かな。2011年という時間がわかりやすくでたアルバムだなっていう感触はありますね。何十年後かに振り返っても、「2011年の気持ちだな」って振り返られるアルバムになったと思います。

――今を刻もうという意識は強かったんですか?

岡峰:ううん、意識していたらもっとレンジ(幅)が狭くなっていた気がする。(震災を)体験して無感情でいた人はいないと思うし、その思いがバンドの音としてまとまったのがこのアルバムだと思うので。

――「バンドの今」と同じくらい「進化」というものを強く感じたんですが、それが今回はおもしろいなあと。今までの曲を掘り下げて新しいものをつくるという、同じ土俵での「進化」ではなく、掘り下げる過程で新しい要素を取り込むことで、今までのバンドを感じさせながらまったく新しいものができているなと。「星降る夜のビート」の「自分らしくあるために変わり続けてゆくけれど」という歌詞がすごくインパクトがあって、THE BACK HORNらしくてすごくしっくりしたんですよね。

松田:うんうん。さっき光舟が話したみたいにみんなで2011年を刻むっていうことに向かっていくけど、バンドをやっていくなかで自分たちは最高のアルバムをつくりたいっていう気持ちもあるわけじゃないですか。今を刻むことに向かっていくと同時に、これが最高のものになるはずだって信じて突き進んでいく。THE BACK HORNとしての道のなかで、『アサイラム』の次にこういう要素を足してもっと音楽的に広げていこうとか、その道を探すことは今やることじゃないって思ったんです。自分たちの扉を開いて新しいところに行くには、まず最初に2011年の今感じているものを閉じ込めなければ、その次がないような気がしていて。だから、向かっていたところは、THE BAKC HORNらしさではなかったというか。自分自身が何をやるべきかっていうことは、結果的にTHE BACK HORNとして何をやるべきかっていうところにもつながっている。THE BACK HORNを構成しているひとりひとりがそこに向き合う姿を信じたときに、どういう形であれものすごいものができるはずだっていう思いがありました。それが結果的に、さっきおっしゃってくれたように「まったく新しいものにもなったけど、THE BACK HORNとしての今までを掘り下げてできた」という音になったんだと思います。そうやって信じてやってきたものになってよかったなって思います。

菅波:なんかいいな、その感じ。マツのその歌詞すげえいいなと思うんだよね。なんか不思議だよね。自分らしさとか全然意識しないで新しいところに行ったら、そこに自分らしさがあったりさ。「世界中に花束を」でも、めちゃめちゃ個人的な気持ちを書いたら、みんなも「オレもその気持ち一緒だわ」って思うようなことがあったり。普遍的なことと個人的なことがつながってたり、不思議だな。

松田:うん、やっぱり「THE BACK HORNとして新しいところにきたと思います」って言ってくれたってことは、ひとりひとりがとことん自分と向き合って音楽をつくったことの結果だと思うんです。

菅波:確かにそうかもしれないね。

――すごく新しい場所にきたと思います。ここに到達するまでには、それぞれどのように震災や自分と向き合ったのでしょうか?

松田:今回自分としては、歌詞から先に持っていくことに重きを置いていて。震災が起きたことによって、「世界中に花束を」の歌詞と将司がつくった曲が合体するっていう奇跡が起きて完成して、自分のなかに歌詞を書く人間として救われた気持ちがすごくあって。もっと自分のなかから出てくる言葉を、歌詞としてつくりたというところにすごく向かっていきましたね。どういう言葉を今投げかけるべきか、誰にその言葉を言うべきか。みんな思ってることを言うために音楽をやってるはずだから、これだという明確な言葉は出てこなかったんだけど、それ自体は歌詞にできると思って。黙っている人でも絶対なにか感じているし、なにかをしたいからどうしたらいいか悩むのであって、思っていることを言葉にしてとにかく高らかに刻んで生きてゆくだけで、誰かに届くかもしれないし行動につながるかもしれない。そうして向き合った結果、「ミュージック」の歌詞ができました。

岡峰:2011年の震災のあと、曲づくりだけをやっていたらもっと煮詰まっていたと思うんですよ。ちゃんとアルバムとして完結できたかわからないし。ライヴでお客さんが泣いたり笑ったりしている顔を見て、確認できたパワーが大きかったから、それが曲づくりには反映されていると思うんですよね。ずっとこもってやっていたら、もっとドロドロしていたかもしれないし、もっと不安な部分ばっかりでていたかもしれない。そもそも、曲づくり自体できなかったかもしれない。東北や日本中いろいろなところに行って、目の前でお客さんの顔を見ることは大きかったと思います。うーん、言葉が見つからないなあ……。

――答えづらい質問ですみません(笑)。

菅波:お客さんからもらった感じもあって……。そういう人の顔が浮かんだりしているだけで、言葉選びひとつでも全然違うよね。「世界中に花束を」のニュー・レコーディングなんてそんな感じだもんね。

山田:だいぶ大雑把に言うと、ライヴをやることによってお客さんと一緒につくったアルバムだよと。

岡峰:そういうことだね。

菅波:なんだったんだろうね、自分たちと向き合ってたのかな。以前目にした言葉で、三陸に“てんでんこ”っていう言葉があって。「それぞれ」とか「めいめい」っていう意味で。「津波や危険が迫ったら、各自自分が生きるための道を選べ」っていう、何回も津波に襲われた村の生き延びるための考え方なんです。「津波がきたら、じいちゃん・ばあちゃんを置いて逃げろ」って子どもたちに教えるらしいんですが、今回もやっぱりどうしてもみんな逃げらんなかったって話を聞いたんです。寝たきりのじいちゃん・ばあちゃんがいたら、家族みんながそこに集まって、誰も結局逃げられなかった。本当に胸が締め付けられた話だったんですけど、どっちも正しいなって思って。地震警報が鳴り響いていても、大事な人が横で笑ってるのが日常だと思っていたけど、実際に地震が始まったときには、“てんでんこ”で自分が生きる道、生き延びるための知恵を考えなければいけない。だから、それぞれが自分なりの答えを求めて走っていくことが大事になると思っていて。そういう意味で4人分の結論は出なかったけど、4人分の自問自答が入ったこのアルバムは、オレめちゃめちゃ正しい姿だと思っているし、「大事な人の側から離れられなった」っていう気持ちもよくわかるし、自分もきっとそうしてしまうと思う。その狭間をこれからも音楽にしていきたいと思います。

松田:すげえいい話だな。

山田:震災が起こって「自分になにができるのか」っていうことをまともに考えたら、曲なんかつくっている場合じゃなかったけど、まずできるひとつとして曲をつくんなきゃいけないっていう衝動に駆られた。それは自分ひとりでどうにかなるもんじゃなくて。オレ、アルバムのなかでは1曲しか歌詞を書いてないけど、曲はもっといっぱいつくっていて。THE BACK HORNのために曲をつくって、みんなでアルバムをつくっていって、いろんなところでライヴをやっていくところからはじまるもんだと信じて、そのときは歌詞もねえ空っぽの曲をいっぱいつくってたな。「本当にそれができることだ」っていう核心があることはそれしかなかったから、曲をつくってましたね。

――今後、来年の武道館までのツアーやFUJI ROCK FESTIVAL 2012など多くのライヴが控えていますが、そうやって向き合うなかでできた『リヴスコール』は、ライヴでのお客さんとの対話も含め、どういったアルバムにしていきたいと思いますか?

松田:まさに「リヴスコール」ですね、生で感じられる命の叫びとか。

山田:最終的には見た人、来てくれた人の力になってほしいよね。

松田:そうだね。ライヴって、その一瞬にこっちから音を出してみんなが受け取るっていうな構図があるけど、この前行った新潟で思ったことがあったんだよね。曲っていう得体のしれないなにかに憑かれたように、オレたち4人やPAの人、照明の人もお客さんもスタッフもみんながそこに向かっている姿が、とてつもねえことやってるなって。いろんな形、いろんな気持ちで向かっている感じは、ひとつとして同じものがないんですよね。そこにいた誰かであり、俺たちであり、場所であり、空気であり。全部の会場で、それがよかったなって思えるものになったら、すげえ最高だなって思いますね。

山田:長いツアーだから、毎回いい形でできるようにオレらもいろいろ趣向を凝らしながらやっていきたいと思います。毎回来てくれるお客さんもはじめて来るお客さんもいっぱいいるだろうし、1日1日新鮮な気持ちで瑞々しい形でライヴを届けたいですね。


■New Release

リヴスコール(初回限定盤)(DVD付) / THE BACK HORN / CD ( Music )

ビクターエンタテインメント( 2012-06-06 )

定価:¥ 3,600 ( 中古価格 ¥ 110 より )


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