Fleet Foxes「Tiger Mountain Peasant Song」のカヴァーがYouTubeで250万回も再生され、世界中の音楽ファンの間で話題となった、スウェーデンはストックホルム出身の姉妹デュオ、First Aid Kit。2ndアルバムとなる今作『The Lion’s Roar』は、Bright Eyes等を手がけるMike Mogisがプロデュースを務め、アメリカで制作が進められた。あのJack Whiteも魅了された、透き通るような歌声と姉妹だから為せるハーモニーは、彼女たちの成長と共にその輝きを増し、内なる想いをより深く聴く者の心に届けてくれる。プロモーションで初来日を果たした21歳のJohannaと18歳のKlara。目まぐるしく変化していったこれまでと、これからの展望について自信に満ちた目で話してくれた彼女たちは、日本の同世代の女の子たちと変わらない、屈託の無い表情を時折見せていたのも印象的だった。

Artist:First Aid Kit
Interviewer:フクダショウコ、Mio Yamada

――初めての来日ということで、まずはお二人のことについて伺いたいと思います。印象的なユニット名である“First Aid Kit”の由来を教えて下さい。

Klara:まだギターを弾くようになる前だったんだけど、確か13歳だったかしら? ある日音楽がやりたいなって思ったの。実際にちゃんと音楽をやるようになったのは、それから1年後くらいなんだけどね。その時に、何かやるのであれば名前が必要だなと思って、辞書をパラパラめくってみたら“First Aid Kit”という単語を見つけたの。それからJohannaと一緒にバンドをやることになって、Myspaceで自分たちのページを作ったの。よくわかってなかったから、取りあえず開設しただけって感じではあったんだけど(笑)、名前をつけなきゃってことで、辞書で見つけていた“First Aid Kit”でやっていこうってなったのね。そうしたらたくさんの人が私たちの音楽を聴いてくれるようになって、こんな感じでどんどん進んでいったの。でも、振り返ってみれば、すごく私たちらしい名前かなって思ってる。“First Aid Kit”って、確かに少しチープな響きがするかもしれないけれど、音楽で誰かを助けたり人の役にたったりっていう意味を込めて、そう、“心の絆創膏”みたいな役割を果たせればいいかなって思っているから。その意味ではピッタリな名前だったと思うし、気に入っているの。

――前作のリリースから今作までの2年は、どんな日々を過ごされていたのでしょうか?

Johanna:とっても忙しかった(笑)。ツアーにも回っていたし、学校を辞めてからは音楽一筋でノンストップ!

Klara:とにかくめまぐるしかったわ!

Johanna:去年は初めてアメリカに行ったんだけど、それからは何度も足を運ぶようになって、ステージにもたくさん立ったのよ。成長もしたし、自信にも繋がったと思うわ。

Klara:ここ1年はすごく刺激的で楽しかった! 初めて体験することばかりだったしね。

Johanna:今年に入ってからはアルバムのレコーディングでしょ。夢が叶ったっていう感じかしら。

――その期間、あのJack Whiteと一緒にレコーディングするという機会もあったのですよね?

Johanna:そうなの。何て言うか、すごくシュールな体験だったわ! あまりにもビックリしたっていうか。

Klara:私たち、ちょうど彼が住んでいるナッシュビルでツアー中だったの。そうしたら、彼から「僕のスタジオに来なよ」って電話をもらって……。Johannaと二人で「オー・マイ・ゴッド!!」ってなっちゃったわ(笑)。「本当に!? だってあのJack Whiteよ?」って(笑)。

Johanna:それで次の日にはJackのスタジオに行って、シングル曲のレコーディングとジャケットの撮影をしたの。全部で8時間くらいだったかしら? だからバタバタしてたんだけど、とにかく彼は本当に素晴らしい人だったわ! 音楽的独創性があるし……。そう、1番ビックリしたのは、「よし、この部分にペダル・スティールを入れよう!」ということになると、即行で電話をしてナッシュビルで最高のプレイヤーを呼んじゃうの!

Klara:5分後にはその人がもうスタジオにいるのよね(笑)!

Johanna:Jackが「このスタジオを1度使っちゃうと、後はもう下り坂だよ」って言っていたんだけど(笑)、本当にその通りだと思えるくらい素晴らしいスタジオで、すべてが赤と白に塗られていて……、マイクのコードでさえも赤と白っていう、すごくこだわりの強いスタジオだったのよね。

Klara:もちろん、Jack自身も最高に格好良かったわ(笑)。

――そうした体験に加え、レコーディングをアメリカという異国の地で行なったことが、今作に音楽的に影響を与えた部分はありますか?

Klara:それは間違いなくあると思う。世界中回ってたくさんの人と出会って、そこから刺激はたくさん受けたわ。それに移動時間が長いから、色んなことをすごく考えるの。そういう時、iPodに思いついたことをメモしたりちょっと録音してみたりするの。

Johanna:そういうたくさんのインスピレーションの欠片を、家に帰ってから精査して曲にしていった感じだったわ。経験値が上がったことで、曲にしたいテーマも増えたのは嬉しいことね。

――今作で初めてプロデューサー(Mike Mogis)と仕事をされていますが、外部の人と制作することで新たな発見はありましたか?

Johanna:そうね。実際にMikeがどんどんアイディアを出してくれたことで、今作では今までやってこなかった新しいことにトライしているの。

Klara:どういう作品にしたいかっていうことは、彼とレコーディングする前から私たち自身ハッキリしていたし、曲のベーシックな部分は全部完成していたんだけど、それを実際形にする手伝いをしてくれたのが彼だったのかなって思う。

Johanna:それに、私たちが思っていた以上の実力を、彼は私たちに期待してくれていたの。だから、自分でもここまで出来るなんて思っていなかったものが、彼によって実現できたんじゃないかしら。

――なるほど。では外部の人と制作をすることで、逆に姉妹で楽曲作りをする良さが見えることはありましたか?

Johanna:私たち、これまでは姉妹と父だけでやってきたから、外部からの視点を必要としていた気がするの。第三者の意見を聞いて、より前に進めるんじゃないかって。だから、誰かと仕事をするということに、ほとんど抵抗はないんだけど……。

Klara:でも、私たちが本当にやりたいと思っていることをMikeがちゃんと理解してくれる人だったから、一緒に仕事することができたんだと思う。それぞれの曲が持っている背景だとか経緯だとかまでは彼に説明しなかったけど、曲が持っているフィーリングをしっかり理解して、それにどういった音をのせれば伝わるのかをちゃんとわかってくれたの。例えば、Bright Eyesってすごく歌詞を大事にするアーティストだと思うんだけど、そんな人たちと仕事をしているMikeだから、歌詞を引き立てる音作りをやってくれるって信頼できたのよ。それは本当、間違いなかったわ。私たちの曲を聴いたMikeの第一声は「歌詞がいいね!」だったの。不安はなかったけど、実際に一緒にやってみて、思っていた通り、歌詞をきちんと扱ってくれる人だった。

――歌詞の面では、特にタイトル曲である「The Lion’s Roar」が描く世界が今作を決定付けている気がします。また“The Lion’s Roar”というタイトルそのものがとても気になっていて、個人的にはFirst Aid Kitの曲が持つ“哀しみ”を表しているのかな、と思いましたが、“The Lion’s Roar”が象徴するものとは?

Johanna:そうね。ライオンなりに訴えたい感情を込めた叫びなんだと思うわ。

Klara:歌詞を書いたのは私なんだけど、いつも歌詞の内容について二人で語り合うことはないの。敢えて言わなくたって、お互い大体解るものなのよね。でもこの「The Lion’s Roar」については、たまたま二人で話す機会があったんだけど、「こういうことでしょ?」「いや、そうじゃないわ」って、お互いがまったく別のことを考えているってことがわかったの。私たちでもこういうことってあるんだなって、その時改めて思ったのよね(笑)。でもね、どちらの解釈だってアリだと思うの。だって、私たちがそうだったんだから、みんな違った解釈があってもおかしくないでしょう? 私たちがそれを決めることでもないかなって。特にこの曲については、好きなように受け止めてもらえればいいかなって思っているのよ。

Johanna:歌詞の意味については敢えて説明しないけれど、“The Lion’s Roar”っていうぐらいだからすごく大きな響きなの。自分たちの想いを大きな声ではっきりとダイレクトに表現できたっていう、アルバムの在り方を象徴したとは言えるんじゃないかしら。

――First Aid Kitの曲は、サウンドは明るくても先ほど言ったように“哀しみ”が内包されていますよね。それが音楽として昇華されることで、新たに生まれてくるものは何でしょうか?

Johanna:人間、ハッピーな時って、逆に曲を書こうなんてあんまり思わないんじゃなかしら?

Klara:そうよね。幸せな時って「私、今幸せなの!」で終わっちゃうのよね。むしろ、哀しい時の方がその気持ちを分析したり深く追求したりするものなの。それが、私たちにとっては曲を書くということなのね。

Johanna:もちろん人それぞれだとは思うけど、私たちの場合は哀しみに触れた時、詩や音楽にそれを浄化することが、哀しみに対する対処の仕方なんだと思うわ。

Klara:その結果、良い曲が出来たら、その喜びが哀しみを癒してくれるの。幸せな気持ちにしてくれるのね。

――ありがとうございます。では最後に、今作を携えて世界を回る意気込みを教えて下さい。

Johanna:どんなことが待ち構えているか今はまだわからないけど、そのわからないっていうのも楽しみなところよ。私たちとしてはこの作品に手応えを感じているから、みんなの反応もすごく楽しみ。世界中を回って、そしてまた日本に戻って来ることができるといいなって思ってるわ。たくさんのファンに会えるのも待ち切れないし、みんなのこの作品に対する感想も知りたいの。このアルバムが、誰かの助けになればこの上ないわ。やっぱりソングライターとしての見返りって、「あなたの曲は、私にとってすごく意味のあるものだった」って言ってもらえる時なの。それが一番の喜びね。

Klara:こんなに良いものが作れるとは思ってなかったくらい、本当にすごく気に入っている作品なの。Mikeの力も大きいけれど、大尊敬する彼が私たちのことを信じてくれたっていうのが、自信にも繋がっているのよ。だから、この先もポジティブな気持ちでやっていけるような気がしているわ!


■New Release

ザ・ライオンズ・ローア / ファースト・エイド・キット / CD ( Music )

ホステス( 2012-02-08 )

定価:¥ 2,037 ( 中古価格 ¥ 920 より )


First Aid Kitオフィシャル・サイト