今年11月、待望の初来日を果たしたBaths。ドリーミーな空気のなか、組み合わされるさまざまなサウンド。そして、ジブリをはじめとした日本文化への愛が込められたオリエンタルな香りを漂わせることで、奥行きのある独特の音像を見せてくれる。若干22歳にして、いや22歳だからこそ見せることのできる器用さ。DOMMUNE、CLASKA、新代田FEVERと圧巻のパフォーマンスを見せ、異国のリスナーにもその才気をまざまざと見せつけた。今回のインタビュー中も、表情豊かに子どものような無邪気さをのぞかせながら、“音楽”への思いを語ってくれた。

Artist:Baths
Interviewer:フクダショウコ、Mio Yamada
Photo:Hiromi Iida


―日本にようこそ! 今回、初来日ですが日本はどうですか? 昨日のDOMMUNEの手ごたえはいかがでしたか?

Baths:東京は大好きで、「どんなとこだろう」ってずっとイメージしていたんだ。だから、やっと来れてうれしいよ。アメリカのどの街よりも東京が一番! 昨日のDOMMUNE、実は最初セッティングで少し混乱したんだ。今まで、ライヴをWEBでストリーミングしたことがなくて、初めての経験だったんだ。設備が限られちゃうから不安もあったんだけれど、とても音響が良くて僕の細かい注文にも対応してくれたから納得のいく音が出せた。本当のライヴがみたいに楽しめたし、いい経験になったと思うね。

―多様化するシーンの中、昨年から今年にかけて一気にブームとなったチルウェイヴ/グローファイや、グリッチ・ホップにBathsは位置づけられることも多いと思います。ここ日本でもすごく浸透してきているのですが、シーンに対してどうお考えですか?

Baths:“チルウェイヴ”というジャンルはもちろん、僕自身がそこにカテゴライズされるのは素敵だね。Toro Y MoiやWashed Outの影響を受けているから、僕もそのシーンの一部だと思っているよ。“チルウェイヴ”は誰にでも聴きやすいから、定着して人気が出ているんだと思う。Toro Y MoiとかWashed Outの1stアルバムは心地よくて何度もリピートして聴いているけど、全く飽きないしゆるく聴いていられるんだよね。僕にとってはエレクトロニック・ポップがそういうジャンルなんだけれど、おそらく“チルウェイヴ”が好きな人にとっては聴きやすいのが一番の理由なんじゃないかな。

―Toro Y Moiらから影響を受けているとのことですが、逆に自分のオリジナルと感じる点は?

Baths:一番違うと思うのは、よりアートっぽいというかアーティストっていう意識が強いことかな。僕は曲にストーリー性を持たせたり、エモ―ショナルな感情を含んだソング・ライティングを重視している。だから、ただのパーティー・ミュージックやイージー・リスニングというものではなくて、自分自身が反映されたヴァイブや雰囲気を含んでいるところが違うと思うよ。特に今回のアルバムの中では、「Plea」という曲は一番いろいろなものを織り込んで作った曲で、違いが反映されてるんじゃないかな。

―ソロ、ユニットなどさまざまな形で活動された経験を持っていますが、それぞれの活動を経て感じる違いなどはありますか?

Baths:いろんな違いがあるけれど、自分自身で音楽を作って演奏する“自分ひとり”っていうのが、一番僕にあったスタイルだと思う。確かに、ものすごく昔にバンドをコラボレーション的に組んでいたことはあるけれど、クリエイティブになれる半面、いろんな意見が雑多に入ってきてしまって自分のやりたいことがまとまらなかったんだ。そうなるよりは、自分自身で作る方が自分の好きなスタイルでできるし、僕はこだわりが強いからひとりの方がやりやすいかな。


―それでは『Cerulean』についてお伺いします。以前のインタビューで「制作方法に決まったパターンない」とおっしゃっていますが、曲作りで重視している点は?

Baths:「特にやり方を決めない」ってことから生まれてくる意外性だったり、実験的なものを自分自身が楽しんでいる部分がすごくあるんだ。曲によっては、歌詞から作ることもあればメロディから作ることもあるし。「ギターの音がちょっといいかも」って思って試してみることもある。いろんなことを試してみることだね。レコーディングの時に、何がどうなるか自分でもわからないっていうことが曲作りで一番楽しいかな。

―本国でのリリースから1年経って、振り返ってみて自分自身の中で作品に対して感じる印象の違いはありますか?

Baths:確かに自分の中でも印象が変わっていて、できたばっかりのころは「超最高! 大好き」って思っていたんだけど、何度も何度も聴いてライヴでやっているうちに、情熱的なものは少し薄れてしまったかもね。だけど、ライヴでパフォーマンスする度に「やっぱりこの曲って超良かったな」っていう気持ちが戻ってくるから、このツアーを通して新しい変化があったよ。今回のアルバム・ツアーが日本とアメリカでの公演で終わるから、このアルバムでの自分の気持ちは終わって次の作品に向けてエキサイティングになってきているよ!

―デビュー・アルバムとして作った手ごたえはどうでしょうか?

Baths:「いくつものゴールを達成できた」っていう気持ちでいっぱいだったよ。「ただアルバムができた」っていうだけではなくて、「アルバムをこういう形にしたい」「このアルバムの曲でどういうツアーをしたい」とかプランを立ててイメージしたこと全部を実現することができたんだ。今回のツアーはとっても機材が少ないけど、それもプランの中に入っていて、スーツケースひとつのポータブルな形でツアーができることを念頭に置いていたんだ。ポータブルな中に歌が入ることで、エモーションに表現することができる。だから、総合的な意味でたくさんのことが達成できたんだよ。

―それが今回の作品のコンセプトやテーマなのでしょうか?

Baths:テーマと言えるテーマではないと思うけれど、まず音としてビートがはじめにあって、そこにエモ―ショナルな歌詞があること。そして、タイトルに象徴されているように、『Cerulean』は青の一種なんだけれど、真っ青な青ではなくてちょっと淡い色とか……。歌詞の面ではテーマというものはなかったけれど、ハッピーな歌もあれば悲しいダークなものもある。

―落ち着いてしまった情熱がパフォーマンスをすると戻ってくるというお話の通り、私自身もライヴ映像などから“今この瞬間に生まれている音”だなと感じていたのですが、リスナーにはどのようなことを感じてほしいですか?

Baths:まさに“今の瞬間に生まれている音楽”だっていうことを感じてほしいね。今までの作品は、いろいろなことを考えて、アイデアばっかりでバラバラになってしまって、いざレコーディングしようとするとまとまらなくて、どこか欠けている感じだったけれど、『Cerulean』は「思いついたら今やろう」というその瞬間で動いて録ったアルバムになっていると思う。「Aminals」っていう曲は、自分でもすごくふざけた感じの曲だと思ったけれど、一度動き出したらその感じでやるしかないから、面白い感じを突き詰めちゃおうって進めたんだ。全ての曲に作った時のエモーションが表れていると思うから、そこを感じ取ってほしいな。

―今、お話に上がった「Aminals」は子どもの声が取り入れられていたり、曲の中にいろいろなサウンドが組み込まれているのがBathsの音楽の特徴だと思うですが、そのアイデアはどのような時に思いつくのでしょうか?

Baths:「Aminals」はリズムがかわいい感じだから、「子どもの声をのせたらいいかもしれない」という思いつきでやったんだ。YouTubeで“子ども、笑い声、動物”っていうキーワードで、子どもが笑いながら動物の話をしている映像をたくさん探して、サンプリングして集めたんだよ(笑)。

―なるほど(笑) タイトルの意味は?  「Aminals」という化学物質があるのですが、関係はあるのでしょうか?

Baths:そうなの!?(笑) このタイトルは、意図的に「Animals」っていうスペルを間違えた感じにしたかったんだ。舌足らずな子どもたちが、「アニマルズ」を「アミマルズ」とか言い間違えちゃう感じをタイトルにも出したんだ。でも、いろんな媒体にスペルミスだって直されちゃったり、オートコレクトで直されちゃうこともあるんだよね(笑)。

―そうだったんですね(笑) YouTubeでサンプリングした音を使っているということですが、ヴォーカル自体も楽器のひとつとして楽曲の中に組み込んでる印象を受けたのですが、意識的にそのような歌い方をしているんですか?

Baths:自分の声も楽器のひとつだと思っているよ。一番アクセスしやすいツール、楽器だよね。僕が影響を受けたアーティストが、表現豊かなヴォーカリストだっていうこともあるかな。やっぱり自分の声が一番エモ―ショナルなものを表現しやすいんだ。

―それでは最後に。大好きな日本での滞在は、次回作へのインスピレーションなど得るものはありましたか?

Baths:それは大きいよ! 『Cerulean』はとてもポジティブで、あえてバラバラな感じを狙ったけれど、次のアルバムはもう少しダークな感じにしようと思っているんだ。日本のオーガナイズされた文化や、きちっとした型にはまった雰囲気を取り入れていきたいと思っているから、反映されていくんじゃないかな。それに、僕は日本がもともと好きだから、どう頑張っても影響を取り除くことはできないんだよね。それは、これからもずっとずっと入っていくものだと思うよ。

―次の作品も楽しみにしてます!

Baths:アリガト!

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