■あらゆる境界を越えて刻みこまれるダンス・ミュージック

 近頃はダンス・ミュージックという言葉が氾濫しすぎて、本来そのサウンドが持つ濃さが薄れてしまったように思う。大げさで機械的なダイナミズムと画一的なビートで固められたサウンドは、その場かぎりの心地良さしか与えてはくれない。体に刻み込まれるような中毒性が足りないのだ。先にある音を想像して音の中に飛び込む楽しみも与えられず、置いてけぼりを食ってしまう。しかし、音源とライヴどちらも欠かすことのできない身としては、一方的なものではなく提供する側と享受する側が互いにぶつかり合うものであってほしい。個人的にはそう思っている。夜の都内で暗躍するMop of Headは、見事にこの願望を満たしてくれる。今という場で行われる生演奏を軸に有機的に生み出される音は、フロアを丸ごと飲み込み音の中に取り込んでしまう。緻密でいて大胆に組み合わされた音の中には一寸の隙もないが、人の手で作り出すことにこだわった音は、熱気を敏感に感じとってフロアと同化したテンションを封じこめていく。ついにリリースとなった彼らの1stフル・アルバムは、前作のEPから飛躍的にその完成度を上げた。音源に圧縮された音が解放される瞬間の快感。ものすごい重圧にもかかわらず妙にストイックで、その違和感が強烈なインパクトを与える。身体を駆け巡る熱に混在する緊張と興奮。似たり寄ったりなサウンドがひしめき合う中、細胞が湧き立つようなトラックがシーンを席巻していく。ライヴ・ハウスとクラブの垣根を取り払い、インストゥルメンタルの壁を越えるのは、既成概念に囚われないMop of Headのような異彩を放つ自由な存在だ。

Mop of Head Myspace

Text by:Mio Yamada