■世界を引き付けてやまない個人的音楽

レコードの回転とともに広がるオリエンタルな香り。一音一音が鮮やかに匂い立ち、むせ返るほどに濃密な空気が立ち込める。ブロック・パーティーやリトル・ブーツといった錚々たるアーティストのプロデュース活動を行っているゴールド・パンダ。その彼自身が描く世界が、『Companion』として姿を現した。雑多混ざり合う無秩序に絢爛な空間が止めどなく広がる彼の世界は、遠い英国ではなく中東の国を思い起こさせる。たとえば、トルコ。多種多様な民族文化が溶け合い、新たな文化を成している国。ゴールド・パンダの世界は、まさに融合のそれだ。“洗練”という名の区切られた箱の中を、様々な色や重さを持った空気がゆったりと対流する。そこでは、アシンメトリーな音が重なり合い、一定のリズムを生みだしている。彼の音楽は、ベッドの中眠りに落ちる前などひどく限定された空間でこそ、親密な魅力が発揮される。すごく個人的なサウンドなのだ。観光通りである人懐っこい大通りを逸れ、路面店立ち並ぶ素っ気ない脇道に足を踏み入れた時の感覚と似ているかもしれない。極彩色で飾られた幕の向こうには、異様に魅惑的で、カオスの混じり合った時間が流れている。あまりに完結したその姿は、聴く人によっては完璧であったり、ひどくまとまりがなく感じるだろう。しかし、どんな形であれ、その流れをしっかりと肌で感じることができる。そして、個人的サウンドが私たちそれぞれの中に溶け込んだ時、新たな空間が生まれるのだ。世界はその瞬間を待っている。

Text by:Mio yamada